大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 平成3年(行コ)27号 判決 1991年5月23日

東京都港区赤坂四丁目八番六号

赤坂余湖ビル三階

控訴人

ピー・エム・エー商事株式会社

右代表者代表取締役

今川忠雄

東京都港区西麻布三丁目三番五号

被控訴人

麻布税務署長 都築隆也

右指定代理人

浅野晴美

杦田喜逸

佐藤一益

干場浩平

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

一  控訴人は、「原判決を取り消す。被控訴人が昭和六二年四月一日から昭和六三年三月末日までの事業年度分の法人税につき、同年一二月二六日付けでした重加算税の賦課決定処分(ただし、平成二年五月一八日付けの更正変更決定によって変更された後のもの。)を取り消す。控訴費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人は、主文同旨の判決を求めた。

二  当事者双方の主張は、次のとおり付加するほかは、原判決「事実及び理由」中の「第二 事案の概要」のとおりであるから、これを引用する。

(控訴人)

控訴人代表者は、本件有価証券売却益が存在することを失念していたものであり、これを故意に隠ぺいしたものではない。もし控訴人代表者が真に本件有価証券売却益を隠ぺいしたとすれば、架空名義を用いるなど、それなりの手段、工作を試みたはずであるが、本件において、控訴人代表者がこのような手段、工作を試みた事実はない。本件は、控訴人の顧問税理士である加藤郁雄が本件有価証券売却益の申告を怠ったものにほかならない。

(被控訴人)

控訴人の主張は争う。

三 証拠関係は、原審記録中の書証目録及び証人等目録記載のとおりであるからこれを引用する。

理由

一  当裁判所も、控訴人代表者は本件決算書及び確定申告書の作成に当たり、故意に本件有価証券売却益が存在することを秘し、もって過少に納税申告をしたものであり、本件決定は理由のある適法なもので、その取消しを求める控訴人の本訴請求は理由がなく、これを棄却すべきものであると判断するが、その理由は、次のとおり付加するほかは、原判決「事実及び理由」中の「第三 争点に対する判断」記載の通りであるから、これを引用する。

控訴人は、控訴人代表者が本件有価証券売却益の存在を失念していた旨主張するけれども、前記引用にかかる原判決説示のとおり、証拠上現れた諸事情によれば、控訴人代表者は本件有価証券売却益の存在を失念していたとは考え難く、むしろ、その存在を知っていたものと推認される。そして、控訴人代表者は、右のように本件有価証券売却益を存在することを知りながら、顧問税理士である加藤税理士に対し、本件決算書及び確定申告書の作成について、本件有価証券売却益を計上しないよう指示したものであるから、国税通則法六八条にいう隠ぺい行為を行ったものということができる。また、仮に、控訴人代表者が加藤税理士に具体的に右のような指示をしていないとしても、控訴人は、その委任を受けた税理士の隠ぺい行為について、その責めを免れるものではない。

二  よって、控訴人の本訴請求は理由がなく、これを棄却した原判決は相当であって、本件控訴は理由がないから、これを棄却することとし、控訴費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 千種秀夫 裁判官 大坪丘 裁判官 近藤壽邦)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例